妻の顔


           家の中に

           自分の世界を

           持っているものこそ

           幸福だ

                ゲ−テ

北川民次の描いた母子像のように

両わきに子どもをかかえ

あなたは眠る

安らかに眠る

過ぎきし十年の齢が

あなたの目尻やひたいに皺をきざみ

その皺の一つ一つが

あの時はこうだった

あの日は大変だったと

わたしの心に言葉にならない声で呼びかける。

 

数年前までは

誰れに年をきかれても

三十歳で押し通していたあなたも

この頃では笑って答えなくなった。

 

十年間座りつづけた妻の座を

あなたはあなたなりに大切にしている

そして

これからも辛抱強く育ててゆくだろう

妻の字に母の字を加えた

前向きの正しい姿勢で――――――

 

不眠のない妻の生活

十年の齢が刻んだ妻の顔

その皺が未来を語る

子供の未来を追いかけて

より深い年齢を重ねてゆく妻の顔






阪神4



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